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たった一人の花見酒を楽しんでたよ
diary photo  今を満開の桜、緊急事態宣言解除後は、花見客で人が多く出ているのを憂う報道などあって、この穏やかな春風に舞い散る花びらの行方、さらに黄砂に山々は霞んでしまい、何もかもが白々としてどことなく嘘っぽい。すぐそばで起きている弾圧、日ごと大ごとになりそうなコンテナ船の座礁、聖火リレーは今どこに。
 できればエイプリルフールであってほしいものだが、誰も逃げることのできない私たちの現実である。住処のすぐそばにある桜並木の老木たちの枝先では、花びらが散り始めて黄緑の葉が目立つようになった。通り過ぎようとして、老木の懐より出でし花開いてまだ間もない、ちいさな枝先の桜がふと目に留まった。
 綺麗だなあ、桜の可憐さが際立って。川沿いの家ではおじさんが軒先にテーブルと椅子を持ち出してたった一人の花見酒を楽しんでたよと夫が言ってた。悪くないなあ、そういう風情。April Fool’s dainty flowers bloom in this cold April rain. 春立ちて一雨ごとの暖かさ。いまどきは、季節の訪れを、静かに味わう境地になれる平穏な一日さえ、とても有り難いのかもしれない。

4月10日
 東京文京区にあるGallery KEIANのオーナーの堀惠栄子さんとは、彼女がパルコにいらした頃だから数十年来のおつきあいになる。あれは確か、アール・デコのガラス作家ルネ・ラリーク展を渋谷パルコで催す時に、会場デザインに携わったのがきっかけだったと憶えている。とは言っても、ついこの間、彼女の籠探しのきっかけに自分で伝えた気がした内容が、じつは別の知り合いへのことづてだった。
 私は初耳です、と即座に指摘され、John Prine の”I Remember Everything”を聴きながら恥を嚙みしめたときから、自分の記憶も怪しいものだと疑い始めた。
 ま、それよりは近い一昨年に、惠栄子さんのお孫さんの誕生に産着を縫って差し上げたら、そのお返しにリトアニアのシギタスさんの籠を選んでくださった。
diary photo  その夜「あの籠を眺めながら、”Blueberry hill”by Fats Domino を聴いています。
 窓から大きな月ものぞいています。しあわせ」とお礼の言葉を綴った。それからしばらくたって、子どもたちに手渡すちいさな籠の展覧会をしましょうよと言ってみた。
 ちいさいけれど正確に縮小した構造の確かな手しごとを伝えるために。

4月20日
 先月のひな祭りに、我が家の花壇のスープセロリが生い茂ってぐんぐん大きくなってきたと話したばかりだが、この間、車の陰になっていたその花壇から木のようなものがそびえているのに気がついて、ひっくり返りそうになった。え? いつの間にか、3倍くらいになっちゃって。こんな日が来るなんて誰が予測できようか。diary photo  恐れ入って、きちんとした名前を図鑑で調べてみた。スープセルリーが正式な名称で、中国で改良されたセロリの原種に近い種類といわれている。芹菜、中国セロリはリーフセルリなどとも呼ばれ、日本では、西洋種がオランダ船で渡来したことにちなんで、オランダミツバともいうと書いてある。
 イタリアンパセリよりも香りは強くて、ゆでたジャガイモやスープに刻んで入れてもほんの少しで事足りる。どうやったらもう少し多く食べられるのかしら。ミツバと言うくらいだから茹でるか炒めるかしてみようかしら。なにしろ、中医で茎葉の場合は1日10gの煎じ液、生食ならば30gを、高血圧、めまい、頭痛、目の充血などに効くらしい。なかでもビタミンUが胃や十二指腸の粘膜の修復を助ける効果があるらしいです。これから仲良くしてもらわなくっちゃ。