- 可愛らしくて人の名前にしても良さそうなくらい
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むかし、ファッションの仕事をしていた頃に、冬の寒さも和らいで、春待ちわびるこのころに、春を感じさせる色、けれど暖かい素材で作る服を梅春ものと呼んでいた。「うめはる」と呼ぶ。可愛らしくて人の名前にしても良さそうなくらい。
梅春の服を考えるのが大好きだった。淡いピンクやクリームのモヘアのニットなどがそう。春夏もの、秋冬ものといった季節をはっきり感じさせるものより、暖かな日差しを待ちわびる気持ちを表現する、といったような抽象的な感じがいい。
ファッションの楽しみって本来はそういうものだから、そして梅春もののシーズンは2月をはさむほんの2、3週くらいの間なので、その時期が巡ってくるとやっぱり浮かれる。it’s so cold yet, a little bid is singing merrily… ラパンフェルトというフランスの兎の帽子の素材と木型が、不思議な縁を巡りめぐって手元に落ちた。
その「うめはる」な佇まいに運命の扉をノックされて、ベレー帽を作ってみた。淡い空色カシミヤの半袖とカーディガンのアンサンブルにベレー帽はよく似合う。 - 2月10日
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節分にちなんで、黒豆と梅干と昆布と山椒に山の釜炒り茶を注いで、福茶を楽しむセミナーをオンラインで催した。東京時代からのクインテッセンスのお客様ばかりだったので、久しぶりに刺激に満ちて華のあるひとときを過ごせた。
福茶の由来や梅干昆布談に始まって、このコロナ・クァランティンの期間に発見したこと。私からは、じっくり本を読む時間ができて、北大路魯山人をひもといたら、昆布出汁の引き方の神髄が書かれていて目から鱗でして、簡単でえも言われぬ美味しさに、今まで余計なことばかりしていたと気付いた話を。
参加者のフィナンシャル専門家は、コロナに関する情報は ips細胞研究の山中教授のホームページを拠り所に過ごしてきたという。是非そのような研究所に私たちも直接投資できるようなファンドを創設していただけませんかといった提案も。
もうそれはそれは、普段なら考えもしないような深遠なテーマに夢中になった。
そして終了後に、私の製作中のベレー帽を披露して、予約まで頂いて、ことほど然様に福茶なり。洋の東西問わず、災い転じて福となす世界でありますように。 - 2月20日
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3、4日前の朝、今年になって初めて雪が舞っているのを見た。小雨なのか雪なのか、目を凝らして、雨とは振る舞いが違うような? あ、雪だと改めて気がつく。幼い頃は、朝起きたら真っ白の銀世界なんてこともあったが、この頃は温暖化のせいなのだろうか、車の屋根に白いベレー帽のように積もることはめったにない。
折しも、雪国に住んでいる友人から画像が送られてきた。白の空間、何もかも、近くのものがより遠くのものに重なって、ホワイト・オン・ホワイト。まるで白地に白の生地で縁取ったアップリケのように見える。
綺麗だねえ、なんていうと近所の人たちに殴られるよ。それどころではネと。まず家の玄関から道を作ることから始まるという。でないと閉じ込められるものね。燃料と食料の確保と水道が凍らないように、外部と遮断されない対策さえ終えたら、ホッとして心地よさと暖かさだけを感じるようになれるのね。しみじみとしてきた。
窓越しの雪の明るさと吸い込まれるほどの静けさは、精神が集中できるし、根を詰めた手仕事を淡々と続けるのに理想の環境だという。地震さえなければなあと。