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どちらも大切な明暗の振幅を繰り返しながら
diary photo  近くの小川のほとりの桜が咲き始めた。と、つかの間の喜びも冷たい雨に打たれ花びらは落ちる。気まぐれな風が身に凍みる花冷えの朝は、辺りが暗くなり、昨日までの暖かさはもうこの先ずっと戻らないような不安さえ覚える。
 そんなはずはない、ぽかぽかとどこまでもやんわりと明るい日差しのなかで、夕刻になると押し寄せる雲が視界を覆う春の陰鬱。
 三寒四温の自然のふるまいも私たちのこころ模様も、どちらも微妙に明暗の振幅を繰り返しながら新しい芽生えの下拵えをする。
 少し重さのあるリネンの、僧衣のような古典的なコートドレスを仕立ててみた。季節は春の祭典に誘っているのに、翳りあるオリエントに恋をするといった雰囲気の、とぼしい光のなかで with my favorite portrait of coat dress... 輪郭を描く肖像のような。

4月10日
diary photo  「ん〜んっ、すっぱくて、おいしい。」ひと口目に思わず出た夫の感想だ。うれしい、それは私にとってなによりの褒め言葉です。
 早春からほんの束の間が旬の、広島の三原農協せとだのレモンが手に入ったなら、今年こそレモンのケーキを作ると決めていた。
 いろんな品種があるなかでこれは、ピリリと刺激があって少し苦く、リモネンの香気芳しい、国産では秀逸だ。
 オリーブオイル、砂糖、卵と混ぜて、レモン1個分の皮を擦って混ぜる。コーンフラワーとアーモンドパウダーとベーキングソーダをふるい入れてまた混ぜたらミルクも、ひたすら混ぜる。型に入れて160度で焼くこと40分、熱いうちにレモン全果汁とパウダーシュガーの液と擦りおろしたレモンの皮(zest)を、まんべんなく霧を散らすように(drizzle)振る、ゆえにLemon Zest Drizzle Cakeと呼ぶことに。
 熱が取れたら冷蔵庫に入れ、ひと晩休ませたら冷たく甘く酸っぱい個性際立つ。

4月20日
 春が来れば自然にタネから芽が出る...なんて甘い考えだということが、我が家の芽出しの準備でわかった。ほんの小さな箱庭の菜園も植栽計画から始めねばならん。
diary photo  去年の反省から、バジルはあんなに必要ないね、ルッコラも案外葉が多いから半分でいいか。ペッパーの種はどれも同じように見えてわからなくなるが、とりあえず唐辛子と、メキシコとイスラエル産ハラペニョと、スープセロリ。そんなこんなで去年の実から採れたタネ、ちりめん赤紫蘇も今年は植えてみようよと新たに注文したタネ、植える位置を間違えないように名札も刺して勢揃いした今年の新生児たち。
 とっくに春、ミミズも土ほぐしに忙しむ盛りに、最低気温がなかなか上がってくれない。地植えなら多少の寒さも乗り越えられようが、箱庭の菜園は気温の影響を強く受けるため、芽出し植え付け逆算して、慎重に機を見計らってタネを蒔く。