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天竺の骨董めぐり
昨夜は風さんのお家ですっかりごちそうになってしまって、ホテルへ帰るなりバタンキューでした。目が覚めて時計を見るとジャスト8時。シャワーを浴びて、ビュッフェで朝食をとって、いつものようにプールサイドでくつろいでいると、小鳥のさえずりがあたりに響き、微風が渡る水面のさざ波に、天竺での光景が次々と浮かんでは消えてゆきます。この場所にいることの不思議を……これからどんな運命が私たちを待っているのやら。
 
「また来れるかな?」「もう一度来たい」「天竺のほかの地方へも旅したいわね」「風さんも旅してくれるかな?」どちらからともなくそんなことをつぶやいていたのに「ん、そろそろロビーへ行ってみよう」と伴侶は急に身支度を始めます。直感どおり、ドライバーはすでに来ていました。「おはよう」「ごきげんいかが?」彼はいつものように首を傾げて手をパァにして「アンティク?」と叫ぶので私も「レッツゴー」とはしゃいで。
 
いろんな店がひしめきあう通りに出ました。廃墟のような空き地に車を止めて「レッツゴー」とドライバーは先ほどの私の口まねをしながら歩きはじめました。最初の店は、植民地時代に英国から運んできたらしいディナーセットや、壊れたドレッサーやトランクなど、時代ものが埃をかぶって、散乱したり重なったりと、足の踏み場もないくらい。このベンガル一帯は、独立抵抗運動がはじまると動乱の中心地になったと聞いています。
 
「家具はいいのがあるけど、補修が大変だね」といいながら伴侶は外へ出て、通りの向こうへ渡ってゆきます。「買って帰るつもり?」外で待っていたドライバーもそのあとを追ってゆきます。次に寄った店では、磨き上げた寄せ木細工のゲームテーブルや、細密なペイントの施されたトランク、重厚感あふれるチークやマホガニーの八角テーブルが並び、いつか見たウィリアム・モリスのプライベートコレクションを思い出しました。