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花いちめんのカンタ
キルトの刺繍やステッチに使う糸は布から抜き取っていたようです。偶然が生み出す組み合わせは興味深いものがあります。モチーフの花ひとつをとっても、強烈に印象に残っているものを抽象的なパターンに置き換えたり様式化して、魅力的な付加価値を添えています。ビハールのスジャニと呼ばれる刺繍のカンタです。女たちは数ヶ月も数年もかけて、なかには数世代に渡って作られたものもあるそうです。
色彩感覚
生まれた土地の気候風土は人びとの色彩感覚を育みます。天竺の人たちの色彩感覚の特長は、コントラスト表現にあります。光と影のように、明度も彩度も互いにきわだたせて引き立てるのです。孔雀の緑と金色、ルビーとエメラルドとサファイア、黒檀と象牙、それはふだん見ている風景や、草花、鳥獣、宝石などに宿る色や輝きを連想させます。
勘定書
モノの吟味よりプライスが優先されるような昨今の販売方法と消費形態では、もはや馴染みが薄くなったかもしれませんが、天竺では市場のような商いがまだまだ一般的。売りたい人の希望があって、買いたい人の算用もあって、互いに歩み寄って取引が成立します。全体でどのくらいの取引高になるかによって割り引き率も変わるのて、品物をすべて決めるまでは個々の値段交渉は控えます。最後に勘定書が出てきます。
譲り受ける
美しいもの、貴重なものであればあるほど、たとえお金を支払って手に入れたものでも、独占所有という感覚からはほど遠く……そういうものにめぐりあえた幸運に感謝をして、大切に遇して保ち、より多くの目を歓ばし、自分の手もとで存分に楽しんだら、次の運命の人に譲り渡す。そして手から手へ、代から代へと引き継いでゆくのが本来だと思います。