- 治療的
- 薬用オイルは最初に胡麻の油の匂いがしました。そのあといろんな薬草の香りが立ってやがて混じりあいます。台の上にうつ伏せになると、鏡餅のように白く大きなたんぽに温めた薬用オイルを浸して、背中をたたくように滲み込ませます。つぎに仰向けになって目を閉じて、ゆっくりと時間をかけて額にオイルを垂らしてくれました。終わったときには頭がすっきりとして、呼吸が深くできて、からだがとても軽やかに感じました。
- 荷造り
- 天竺の荷造りはちょっと手が込んでいます。布の両端を揃えてたたんで段ボールに詰めて、テープを貼って、そこからは専門の人の仕事ですが、いちばん薄手の白い天竺木綿の布で箱を包んで、縁に添って糸で縫い閉じてゆきます。その手縫いの厳重さ、出来上がりのすてきさ、天竺からの荷物は、たとえ航空便でも布梱包で届くのがうれしいです。
- 心付け
- なにかのサービスを受けたとき、秀でて上手く効果があって、期待以上のよろこびを得られたときはその人に感謝して、心付けを渡したくなります。今やいかにも現代的といおうかティップは禁止、サービス料は明記され、その他の心付けは従業員全員に均等分配すると宣言しているところもありますが腑に落ちず、かえって不平等な感じもします。
- 手をつないで
- 近東や中東を旅すると、男同士が手をつないで歩いているのを目にします。最初はtouchy-feely、べたべたと感傷的な感じがして戸惑いますが、そういった習慣は風土から生まれる気がします。広大な大陸を移動する人たちの出会いはひとときのよろこびを分かち合う表現……人は運命に翻弄されるから。たとえば女の人同士でも握手をするとき、感謝の意味を込めて手に接吻したり、いつまでも握った手を離さなかったりします。