logo

さすがに中東は遠いな
 中東料理のフムスを久しぶりに作った。昨夜ひよこ豆を浸しておいたので、朝はそれを圧力鍋で煮て、熱がとれる間に材料を揃える。ニンニク、レモンの絞り汁、塩をブレンダーにかけて、微塵になったらひよこ豆を入れて、タヒニと呼ばれる胡麻ペーストを加えてオリーブ油と粗挽きの黒胡椒を振りかけて準備完了。
 ブレンダーでペースト状にする時間のかけかたと、ひよこ豆の茹で汁を加減して好みの滑らかさに調整するところが唯一の勘所と呼べるものかしら。
diary photo  一年中作れそうなのに、去年のこの時期には生レモンが近所で手に入らなかったことに懲りて、春先にレモンをたくさん買って塩漬けして保存した。
 さっそく塩漬けのレモンを使ってみたら、レモンの瑞々しい果汁の香りではないけれど、レモンの皮のちょっと苦甘い、エキゾチックな香りが一拍遅れでやってくる。sさすがに中東は遠いな、と思いを馳せれば、いつもとちがう美味しさにめざめる。今回はスフレ皿に5つ作って冷凍した。
 夏バテしそうな昼にひとつずつ出して Classic food heals every single one.ピタパンと同じオーブンで温めて、冷たいキュウリ、トマト、タマネギと一緒に盆に盛れば、だれもがワッとばかりに笑顔で飛びつく。

7月10日
 クインテッセンスの窓からの眺めをワンダーランドにしたいという3年越しの野望が今年こそ結実しそうだ。一度枯れかかった2本のぶどうの木を蘇らせたことを去年の春に記して、その年は枝を茂らせて終わったが、今年の春、そのうちの一本に花芽を発見したとき、まさか花なんて思いも寄らなかったので、感動に沸いた。
 雨が降るたび風が吹くたび虫が飛ぶたび一喜一憂しつつも、我が園芸部はわずかにぶら下がった房をさらに剪定などして、愛らしい実を結ばせだ。
diary photo そういえば、近所の駐車場のぶどう棚には一房ずつ袋がかけてあったような。いつかけるのかしらと、ぶどう農家の袋がけ作業の動画を見てみたら、まだまだ実が大きくなってからのようだ。
 ベテラン栽培家は、本来なら昔ながらの種のあるぶどうのほうが実もしっかりして味も濃いと教えてくださる。最近は種無しじゃないと売れないから仕方なく種無しぶどうを作っているのだけれど、健康的な性質は種子そのものから来ていると。
 ふ〜ん、我が家のぶどうはヨーロッパの品種でワインに向いているらしい。実も種も生ではどうなのかしら。葉もちまき料理にして食べてみたい。

7月20日
 キッチンの窓辺に置いたちいさな笊のなかには、ニンニクとショウガを常備しているが、春の頃から、ひからびた柑橘がひとつ加わった。実家の裏庭にレモンの木があって、震災後にまだ青い実をつけていたのだけれど、食べられるまでには成長できないまま、地に落ちてしまったひとつを拾って持ち帰ったものだ。
 冷蔵庫の中で冬を越して、すっかり水分が抜けて萎んでしまった。それを外に出して、さらに窓辺で乾燥させてみたらビー玉くらいになって愛らしい。
 このふしぎなかたち。金の鎖を付けてペンダントやイヤリングにしてみたい。
diary photo じっと見つめていたその先に、ああ、もしかして、何とは特定せずとも、このような果実、種子、あるいは花に共通した独特のふくらみが生命を象徴するかたちなのかもしれないとひらめいた。そして両手を合わせてみれば、同じようなふくらみがかたち作られる。
 そういえば、インドではブテ、英語ではペイズリーと呼ばれるこれらのモチーフは、古より版木で幾何学文様にしてみたり、アクセサリーのモチーフにして、暮らしのそこかしこにちりばめられてきた。装飾は常に身辺にあることで、日々の慌ただしい仕事の手を休めて、眺めたり愛でたりするひととき、ふと幸せな気持ちに包まれる。