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そのキラリを目にしたとたん
 そろそろ夜が長くなってくるこのごろ。夕焼けが神秘的な色をして、オレンジから紫色へと織りなす階調がやがて深い青い空に吸い込まれてしまう。フランス人はこの色をブルニュイとよび、大好きな色だそう。美しい夜を楽しむために遅くまでパリのカフェは開いているの。などと話す食卓でふと窓を見やれば東の空に月が。
diary photo  青く深い空にくっきりと月の形がくりぬかれて、銀の光が漏れ出るように豪華な輝きを見せる。そしてすぐそばで宝石のような星がひときわ輝く。夜の星空もゴージャスだが、暗がりにステンドグラスに透ける光の色や、外の緑を吸い込んできたような光が窓から差し込み、白い壁を伝う揺らぎを眺めていると、いつまでも飽きない。
 昔飼っていた猫が、窓から漏れる光が室内の鏡に反射して、そのキラリを目にしたとたん、手、否、前足で、壁に映る光を逃すまいと必死に捕まえようとしていたっけ。
 そうか、こんな気持ちだったのか。秋になると夜空の月や星のことばかり書き綴るので find harvest moon light one tender autumn night. お客様から頂戴した便りに「このごろ、よく夜空を見上げるようになりました。星が瞬くと気持ちがシンクロしたように思えて嬉しくなります」とあった。

10月10日
 朝夕はぐんと冷え込むようになったが、日中まだ暑く半袖のままですごすといった不調和モードに、昔の日本では考えられないような極端な気候になってきたように感じるこのごろ。この寒さの中でも、いまだ蚊に刺されることがある。diary photo
 デザイナーの友人が仕事でブータンに滞在していた時期に、お土産にブータンの唐辛子を催促したら、オッケー、ポッケに入れて帰るねと。
 去年の冬に封筒に入れて、滞在先の東京から郵便で送ってくれた。夫が冬に芽出しをして、数種の唐辛子を育て鉢に植えて、春になったら大きな鉢で本格的に育て始めたのだけれど、いよいよ夏の実の成長の盛んな時期に、ハラペーニョやソムリエ唐辛子と比べるに、ブータンの唐辛子だけが小さな姿を保っていた。
 いつの間にか、呼び名もブーちゃん、こんな暑い夏は嫌いだよね、日本の気候は向いていないのかな?などと気をもんだ。が、大雨が過ぎて熱さも少し峠を越えたから、あれはお彼岸の頃からかしら、やおら成長がめざましくなってごらんの通り。すごいでしょう、とばかりにたわわに実って、輝くようなシグナルを発した。デッキの一番端にあって、きりっと鮮やかな存在感で肌寒い朝に彩りを添えている。
 辛さはマイルドでちょっと苦みがうまいブータンの唐辛子は実にかぐわしい。

10月20日
 東京・新宿にクインテッセンスがあった当時、同じビルの33階にあったオフィスで働いていらしたお客さまと、近ごろ頻繁にSkypeでチャットをしている。きっかけは熊本地震のときに、彼女からメールが来て、今すぐ見舞いに電車に乗ると。お気持ち嬉しいけれど今は来ないで、とお断りした日が心にずっと引っかかっいて。
 被災地は自分たちのことで限界、落ち着いた頃には仕事に向かい、ついにこの夏彼女を思い出して連絡をした。あれから互いの身辺に起きたことや、コロナの後に考えたこと、これからしたいことなどが堰を切ったようにセッションが続く。diary photo
 ふとクインテッセンスで選んだサファイアのロングネックレスを身につけていた彼女の姿を思い描きながら話している自分に気がついて、あのネックレスは素敵だと言ったら、彼女はものすごく気に入っていて、今も身につけていると心が静まるとおっしゃる。そこでサファイアの秘めたる力のコンテンツを送ってあげた。
 サファイアはラテン語でヒヤシンス… そのピュアな色の石は霊的な道への大切な伴侶ですとある。山歩きに夢中な人だから、これはまるで彼女の人生の筋書きのようではないか。そしてサファイアは肌の輝きを若返らせるそうで、ほんとなの?